日本子ども虐待防止歯科研究会活動報告書 (2023年6月集計分)

1.都築 民幸

2020年4月〜2022年6月、死因究明等推進本部専門委員を務めました。閣議決定された施策が、「令和4年版死因究明等推進白書(厚生労働省編、令和4年10月26日)」として発行され、
【施策番号87】:Child Death Review(予防のための子どもの死亡検証)に関する情報の収集、管理、活用等の在り方についての検討
【施策番号88】:虐待による死亡が疑われる事例の児童相談所等への共有
が採択されています。歯科は直接子どもの死因に関わらないと思われていますが、児の成育状況や死亡の背景等を評価できると考えます。
web版が以下のURLに掲載されていますので、ご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shiinkyuumei_hakusyo.html
(2022年12月2日)

2.川越元久

平成20年ごろから「子ども虐待関連の調査」のため、児童養護施設・川崎愛児園を訪れるようになった。当時、施設入所者の2/3は被虐待児であり、中には養育環境が原因で劣悪な口腔状態を呈する子供が存在していた。そのため、むし歯予防にフッ化物洗口を導入したが継続が難しく困っていたところ、施設の立て替えをするという話を聞き、施設フロリデーションの導入を勧めた。園側より賛同をいただき、導入へ向けて動き出し2016年(平成28年)8月24日にフロリデーション装置を設置し、説明会を経て12月よりフロリデーション水の入居者への供給を開始した。その後、いくつかのトラブルは経験したものの、6年が経過し、現在では順調に経過している。昨年、その装置の精度に関する論文が完成したので添付する。
同じく昨年、神奈川県歯科保健賞研究奨励金に、「児童養護施設でのウォーターサーバーフロリデーションシステム導入は児童・生徒の保健行動を高めるか」という研究課題で申請したところ採択されたので、今年の4月から一年間をかけて本研究を進めていく予定。
(文献)Development of small-scale water fluoridation equipment
Jun Motohashi1), Chieko Taguchi2), Wenqun Song3), Kazuaki Kawamura3), Hirohisa Arakawa4), Motohisa Kawagoe5), and Akihisa Tsurumoto1)
Journal of Oral Science, Vol. 64, No. 4, 283-285, 2022
(2023年1月24日)

3.白川 哲夫

2022年5月19日〜31日(幕張メッセ国際会議場ならびにWeb開催)の日程で、大会長を白川が担当して第60回日本小児歯科学会大会を開催しました。そのうち本研究会の主旨に合致した活動として、「60周年記念大会企画講演:長期化するコロナ禍で子どもたちをどう支えるか」と題するシンポジウムを開催し、3名の先生(公益社団法人母子保健推進会議 佐藤拓代先生、おかだこどもの森クリニック 岡田邦之先生、鶴見大学歯学部小児歯科学講座 船山ひろみ先生)にリレー講演を担当していただきました。「子ども虐待予防の親支援」(佐藤先生)ほか、子ども虐待にどう取り組むかについて示唆に富む講演を行っていただきました。
(2023年1 月30日)

4.光畑智恵子、野村良太

この2年間はまん延防止等重点措置の適用等で思うように活動が行えないこともあったが、令和4年度は新型コロナウイルスの流行前とほぼ同程度に一時保護施設での歯科検診ならびに口腔衛生指導を実施することができた。以前は当科の構成員のみで、数年前からは同門の有志の先生の参加を得ることで活動を行なってきたが、令和4年度からは歯科医師会の関連部門の先生方との協働となった。歯科検診においては、記入用紙を簡便で使いやすい書式に改善し、物品は歯科医師会から支給いただけることとなった。また、短期間の入所中に口腔に関する意見書が必要となる場合があるが、依頼に関するマニュアルが整備され、スムーズに対応できるようになった。
(2023年1月30日)

5.星野倫範

2022年度の活動報告として
・小児科と小児歯科保健検討委員会の中で児童虐待に関するテーマで話し合いを行った。
・日本小児口腔外科学会小児虐待防止委員会・小児関連学会連絡協議会において、子ども虐待防止オレンジリボン運動の一貫として2023年度の日本小児口腔外科学会大会に於いてオレンジリボンが配布できるよう手配を行った。
・埼玉県小児保健協会において、医科、歯科、看護、養護教諭、行政関係のメンバーの中で虐待に対する話し合いを行い、講演会を開催した。
・自診療機関で障害児の歯科診療の際に保護者の虐待を思わせる所見が認められたため、居住地区の保健センターに報告を行った。
(2023年2月1日)

6.土岐志麻

現在、日本学校歯科医会で、「コロナ禍における児童生徒の調査研究委員会」の委員長代行として、アンケート調査を行い、その集計・解析中です。この結果から虐待につながる事項を確認するなど細かい作業を行っています。みなさまに、発表できるようになりましたらお知らせします。
(2023年2月8日)

7.井上美津子

コロナウイルス感染症の流行以来、大学での診療を完全に引退し、医科病院におけるマタニティ歯科(妊婦や赤ちゃんの歯科学級)などで親子のサポートに関与しているのみです。
日本小児保健協会の「小児科と小児歯科の保健検討委員会」にはまだ関与しており、現在委員会では「乳幼児の公的健診での保護者に寄り添う子育て支援」についての提言をまとめています。そのなかで、宮新先生が「子どもの虐待」について、歯科医師が歯科健診で診査可能な虐待関連所見についてまとめてくれています。宮新先生の方から活動報告が出されていれば、それでよろしいのですが。
(2023年2月19日)

8.岩原 香織

近年2年間の活動について
子ども虐待に関する創傷鑑定、生活状況の推定などの司法対応事例は年間15件程度で推移しています。
日本歯科医師会の「健やかな子育て支援のチェックリスト」作成に関し、本会顧問、副会長、理事の先生方とともに参画しました。
教育としては、学生への講義の他、文部科学省・大学教育再生戦略推進費「基礎研究医養成活性化プログラム」(代表校:金沢大学)において、児童虐待に対応できる臨床法医学者の養成、児童相談所との連携等に協力しています。
法医学的な対応はもちろんですが、相談や講演を通じ、診療所や学校での対応、家庭での子育てや児童福祉施設での支援に関する助言などの活動も行っています。(2023年2月20日)

9.森岡俊介

平成14年から、今まで、東京都児童相談センターで一時保護された子どもに対して、毎月1回、30人前後に歯科検診と健診結果に伴う歯科保健指導を当初歯科医師2名、歯科衛生士1名で現在は歯科医師4名対、歯科衛生士2名体制でボランティアとして行ってまいりました。
東京都では一時保護されるこどもの増加に伴い、都管轄の一時保護所を増設しました。
そのうちの小学生を対象とした新宿区にある一時保護施設で私が、2021年8月より、1日6人前後歯科検診と健診結果に伴う歯科保健指導を実施しています。
また、東京の特別区でも児童相談所を設置できることとなり。板橋区子ども家庭総合支援センター開設に際し、歯科医師会の窓口として、歯科医師会専務と共に、一時保護児童の歯科検診・保健指導事業の発足に係り、2022年7月より保護児童健診医の委託を受けることとなりました。本事業には報酬があることから、私の任期は本年3月までですが、後任も決定しており、事業は継続となります。また2005年から私が就任している板橋区要保護児童対策協議会委員は継続となっております
板橋区子ども家庭総合支援センターで一時保護された子どもの生活習慣を知るために、新たに事前アンケートを導入しました。このアンケートは、新宿区にある一時保護施設でも取り入れ、今後データーの蓄積と分析を行う予定です。
一時保護された子どもの歯科健診データは1500人ほどとなりましたが、これらハイリスクの子どもの腔腔内状況も以前に比べればよくはなっていますが、まだ多くの歯科医療ネグレクトがけんちょであり、歯科関係者の関与が必要と思っております。
(2023年2月25日)

10.香西克之

私は現在,一時保護所での歯科健診活動に参加しています。広島県歯科医師会と広島大学小児歯科学研究室では,これまで10年余りにわたって,県内の一時保護所3施設の保護児童を対象に毎月,歯科健診活動を行ってきました。さらに,歯科医師会のご尽力で2022年度からはボランティア的活動から脱皮し,行政のバックアップのもとに本格実施することになりました。これまで活動内容や子どもたちの口腔内状況は学会や学術雑誌,商業誌などで発表しています。また,学生への講義,様々な職種の研修会や学会での講演で,児童虐待防止に歯科医療や口腔保健が貢献できることを語ってきました。
ところで2023年度の日本子ども虐待防止歯科研究会の学術大会が広島県歯科医師会の主催で開催されることになりました。開催日程は2024年2月の予定です。具体的な日程,会場はまだ決まっておりませんが2022年度に開催できなかっただけに,大いに盛り上げたいと思いますのでご支援ご協力の程よろしくお願いいたします。
(2023年2月27日)

11.宮新美智世

外傷関連の講演を行う機会に、虐待やその予防をお伝えするように心がけてきました。また、外力による歯の動揺や脱落と鑑別を要する異常として、歯が幼少期に突然脱落し、連続して複数歯を失う異常であるところの、“特発性乳歯歯根吸収”に関して、複数症例報告ならびに文献的考察を誌上報告しました(アジア外傷歯学会、小児歯科臨床、2022年10月号)。そのほか、小児保健協会の「小児科と小児歯科の保健検討委員会」に参加させていただき、「乳幼児の公的健診での保護者に寄り添う子育て支援」について、提言をまとめる過程にあります。見過ごされがちな虐待の芽を早期に発見し、問題点への指導やサポートへとつなぐことで、育てにくさを軽減することを目指して、「子どもの育てにくさと歯科健診-虐待に気づく所見について」として投稿しました。診査時の視点を解説するとともに、問題解消のための窓口として保健指導で保護者のストレス軽減に寄与すること等を示すなどして、歯科と小児を取り巻く医療者との相互理解と連携を促すことを期待しています。
(2023年5月25日)

12.渡部 茂

虐待防止活動  2021~2022年
2022年12月、千葉県学校保健学会を明海大学で開催しました(第25回千葉県学校保健学会開催案内 参照)。子どもたちの学校での現状について様々なご報告がありました。千葉県歯科医師会から児相での健診状況についてポスター発表もありました。千葉県や地元浦安市の教育委員会などとの連携もできつつあります。江戸川区歯科医師会岡本和久先生が中心になって行われている江戸川区児童相談所、はあとポートでの歯科健診事業と連携させていただいています。児相を離れた後の子どもたちの保護について考えています。また歯科衛生士国家試験出題基準に虐待問題が加わることから、最新歯科衛生士教本(医歯薬出版)、小児歯科に「小児虐待」の項目を追加させていただきました(2022年)。

以下講演などです。
千葉県保険医協会研修会:「児童虐待とその対応 -日本子ども虐待防止歯科研究
会の活動-」2021年7月。 第24回千葉県学校保健学会学術大会ワークショップ:「虐
待防止に対する医療従事者の役割、早期発見前の子どもたち」2021年12月。 東京
都福祉保健局主催令和3年度児童虐待対応研修会:「口腔から見える虐待」2021年
12月。 東京都立心身障害者口腔保健センター主催学校教職員等研修会: 「口腔内
環境から疑われる児童虐待の現状」2022年8月。 第25回千葉県学校保健学会長
講演:「子どもの口腔は生活を表している」2022年12月。 東京都荏原歯科医師会学
術講演会:「口腔内環境から疑われる児童虐待の現状」 2023年1月。
(2023年6 月19日)

奈良県からの発信!!


02北村義久先生
は開業当初保育園の検診にて子どもたちの口腔内の変化に気が付き、以来約15年、350回の講演を続け、奈良県子ども家庭局、児童相談所、児童福祉課、児童養護施設へ一時保護所、児童養護施設等の歯科検診を依頼する。私は北村先生主宰の「ネグレクトを知る会」に参加し児童養護施設歯科ボランティア(児童養護6施設、2乳児院)を開始し、県と県歯科医師会協働の児童虐待予防マニュアルを作成した(奈良県、奈良県歯科医師会ホームページPDF)。また橿原市の子ども発達支援センターかしの木園での歯科支援を市から依頼され開始、酒本産婦人科で妊婦歯科健診をボランティアで開始し現在は市が妊婦歯科健診無料券配布に至る。

今、私たちは健常者と障害児の混合診療を目指して、どの子どもたちにも拘束装置なし、鎮静なし、その延長上に見えてきた健常と呼ばれる子どもたちの口腔内の変化に!抜歯なし、ブラケットなし、保定なし予防矯正治療を開始している。児童虐待から妊婦無料検診、子どもたちたちの発達そしてあこがれの歯科医師、あこがれの歯科衛生士を作り子どもたちの夢を叶えることを使命としている。

01

*ネグレクトは子どもの人権侵害 *子どもの側の視点で考える(保護者の意図の有無は一切無関係)

子ども虐待はある場所に隠れているのではなくどこの家庭にもおこりうる。今、と言う時間軸は未来~今~過去と流れています。過去からは決して流れることはできません。今までのことを悩む人生を、未来を創る子ども達には決して残してはいけないと私たちは考えています。過去を変えることはできません!変えられるのは未来だけです。

日本ではchild abuseは児童虐待と訳されています。虐待を広辞苑では残酷な待遇と書いてあります。ところがabuseの訳は才能、地位、人の好意などを濫用(悪用)する、誤用する。薬物などを濫用する(drag abuse)と言う意味で、child abuseは大人が子どもを力や地位で悪用していることを意味します。虐待⇒残酷、abuse⇒濫用、現代では明らかに解釈が間違っています。child abuseの訳は多くの人が言う様に[子どもたちの不適切な扱い]とするべきだと思います

奈良県から提言!“ちょっとお母さん!5本以上むし歯あれば、虐待と言う話がありますよ”~日本では子どもは親のものであるという認識が高いと思われるが、未来をつくる子どもたちは社会の宝であるとの認識のもと育てていく必要性を感じる~

*私たちの街は私たちが支える!

  • 抜去冠の寄付を奈良県中の歯科医師にお願いしています。
  • 児童養護施設から感謝状と寄付金控除が得られる。

*妊婦歯科健診の目的と必要性

  1. 妊婦さんの歯周病予防(早産・低体重児を増やす可能性-発達障害の可能性も増える)
  2. 妊娠期間に赤ちゃんのお口の管理理解(鼻呼吸へのお口の機能発達と虫歯予防の支援)
  3. 死に至る児童虐待の多くが0歳児に!(授乳行動で愛情ホルモンが出るー虐待予防)

吉田美香 理事

シンポジウム:不自然なキズと証拠の残し方-身体外表と口腔の損傷・病態について-

コーディネーター:都築民幸

第21回日本子ども虐待防止学会新潟大会 2015/11/21

日本歯科大学生命歯学部歯科法医学講座 都築民幸

秋田大学大学院医学系研究科社会環境医学系法医科学講座 美作宗太郎

日本歯科大学生命歯学部歯科法医学講座 岩原香織

シンポジウム:歯科に求められる児童虐待への対応と予防

企画:香西克之大会長
コーディネーター:渡部 茂
第53回日本小児歯科学会(広島)
小児歯誌53巻2号58~60p

小児歯科の新たな視点―児童虐待研究―

明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野 渡部茂

児童虐待対策における歯科医師の役割

広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門法医学研究室 長尾正崇

広島県歯科医師会の児童虐待防止に係る取組み

一般社団広島県歯科医師会 山﨑健次