設立趣旨

2000 年に児童虐待防止法が制定されて以来、児童虐待防止に向けた取り組みが全国レベルで整備されてきています。しかしその発生件数は留まることを知らず増え続け、咋年(2014 年)には虐待による累積死亡例が1000 人を超えたことが報告されています。

口腔疾患は生活習慣病の最たるものであり、齲蝕を多く持つ子どもたちの生活を調べると、そこには親の病気による育児放棄、家庭の貧困、両親の離婚、本人の病気・障害、望まない出産・・など想定外の生活を強いられている子どもたちの生活が浮上してきます。口腔疾患を家庭環境のバロメーターの一つとして考えることは、発見困難なネグレクトという状況を露呈させることにつながる可能性が高いことが明らかとなってきています。

虐待に関する科学的研究については、すでにいくつかの学会、研究会が組織され活動していますが、それらに加盟している歯科医は極めて少なく、個人による散発的な活動が見られるにすぎません。歯科医は子どもたちの生活環境をスクリーニングする番人でありながら、その実態は伴っていないのが現状です。「総論は賛成、しかし各論となると・・・」という理由で後回しにされている現状に鑑みて、組織化、集約化、義務化を計り、虐待予防を歯科領域から専門に考える会の設立に至りました。

これまで、地域の歯科医師会や個人の活動によって支えられてきた取り組みが、本研究会設立を機に国を超えてネットワーキングし、手に手を取って、児童虐待・ネグレクトをこの世界から根絶していくことが本研究会の設立目的です。

(2015年10月 渡部 茂)