6月7日(日)、日本大学歯学部(東京都千代田区)にて、虐待予防に関する諸問題を歯科領域から専門的に討議する場として、「日本子ども虐待防止歯科研究会」の設立集会を開催いたしました。
まず川﨑二三彦氏(子どもの虹情報研修センター長)が「わが国の児童虐待の現状と課題」をテーマに基調講演を行った。
児童相談所、市町村による虐待対応件数(児童相談所:73,802件,市町村:79,186/平成25年)が調査を開始した平成2年より右肩上がりである現状や、そのほか被虐待児および虐待者、一時保護所の実態を示すデータを報告。「現在、虐待防止の取り組みは発展途上であり、今後に注目する必要がある」と述べ、課題として、保護者に対する妊娠期からの切れ目のない支援、虐待発見時の初期対応、要保護児童対策地域協議会の機能強化、緊急時における安全確認・安全確保などの項目を提起した。
続く発起人講演には、岩原香織氏(日歯大)・都築民幸氏(日歯大)、森岡俊介氏(東京都開業)、渡部氏が登壇。
岩原氏・都築氏は、虐待防止や対応における歯科医療職のあり方を、「マルトリートメント」という考え方とともに紹介した。マルトリートメントは虐待よりも広い概念として「大人の子どもへの不適切なかかわり」を指し、歯科医療職が明らかな虐待だけでなく、広い視点から子ども、大人両者へ支援できる可能性を示した。
森岡氏は、一時保護所と乳児院を対象に行った「児童虐待と歯科との関連」についての調査を中心に解説。
被虐児の齲蝕処置率が低いことを指摘し、歯科医療職がネグレクトを発見できる可能性に言及。また「治療を行わない(行えない)理由のバックボーンを考えることが大切」と述べ、「歯科の役割は活きる力を支えることである」と訴えた。
発起人代表でもある渡部氏は、虐待に関する歯科学的な分析、幼稚園・学校歯科健診の精度改革、歯科医の口腔健診に対する意識改革、虐待防止のネットワークの構築、保護施設での歯科的支援など、本研究会の課題を提議し、口腔の健康から生活を守る姿勢をあらためて示した。